何週間か前のファミ通内コラム、吉田直樹の吉田日々赤裸々。より、esportsについて書かれていたので紹介を。
吉田直樹さん:『FF14』のプロデューサー兼ディレクター
「違和感の正体」
『FF14』内のPVPコンテンツ”The FEAST”の初の公式大会が始まった。
その中で、これは「esportsですか?」と聞かれることがあるが、答えが実に悩ましい。
理由としては、現在の日本で使われているesportsという言葉の定義と吉田さんの中のesportsは似て非なるものだから…という所から始まる。
Wikiで調べるとesportsとは…
”エレクトロニック・スポーツは、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ・競技として捉える際の名称である”
とあるが、吉田さんの中のesportsの定義とは若干異なる。
”esportsとはエレクトロニック・スポーツの略称であり、複数のプレイヤーで対戦されるコンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツとして捉える際の名称である”
という表現が一番しっくりくるという。
esportsとは、電子世界のスポーツの名称であって競技そのものを指すものではない。
巷で騒がれているesportsはどうもこの解釈とは異なり、esportsそのものを発展させるだとか、許可制にするだとか、プロ育成だとか、「違うんだよなぁ…」と感じるとの事。
”競技”であるはずのゲームやそれを高いレベルでプレイする”ゲーマーコミュニティ”を置き去りにしているという疑問が浮かぶ。
賞金が云々、景表法が云々だとかそういう話ではない、そもそも前提がズレている。
サッカーを例にして説明すると…
サッカーは競技であり、200を超える国で親しまれ、3億人近い選手によってプレイされ、現在開催中のFIFAワールドカップの視聴者数は300億人を超える。※サッカーのWikiより
膨大な競技人口とファンを持つスポーツのため、民間企業がチーム運営を資金的にサポートしたり、選手への個別契約を行った結果=サッカーをプレイすることで給与を得る「プロサッカー選手」が生まれている。
これをesportsに置き換え、架空の超人気FPSゲーム『ザッパー』に例えるとこうなる。
『ザッパー』はesportsの一種であり、100を超える国で親しまれ、500万人以上のゲーマーによってプレイされ、公式大会の視聴者数は2憶人を超える。
膨大な競技人口とファンを持つesportsタイトルのため、最上位ランカー(超上手いプレイヤー)は民間企業とスポンサー契約を行い、『ザッパー』をプレイする事で給与を得る「プロ化」が進んでいる。
こう文字で表現してみるとわかるけど、両者には何も違いがない。
要するに電子世界で行うか現実世界で行うかだけの違いだけで、結局はesportsはスポーツなのである。
なのでesportsが盛り上がるだとか流行るという表現をするのは変で、正しくは競技となるゲームとそのゲーマーコミュニティを指すものだと思う。
これらを踏まえて考えた時に、日本で開発されたゲームの中で世界でesportsと認知されているのは格闘ゲームくらいだと思う。
その他のジャンルのゲームを各競技プレイヤーや競技団体が必死にアピールするのは当然だとは思うが、それはやっぱりコミュニティが主役になってやっていくものだと思う。
総括
違和感の正体というのは”esports”というワードだけで話を進めすぎという事。
例で挙げるなら、サッカーが盛り上がっているからといって「最近はスポーツが流行っているね」なんて言う人も思う人もいないよねって話。
esportsという言葉だけを掲げてアピールするのではなく、正々堂々と競技ゲームだけで一般的に認知されていかなければならなくて、その先にesportsとして云々という話になっていくのだと思う。
そうなっていくには、やはりしっかりとした面白さがある競技ゲームとファン、そしてコミュニティが必要。
今日本で起きている事は、大して流行ってもいないゲームの大会に賞金かけて強引にesportsだとアピールしたり、意味があるのかないのか微妙なプロ制度を作ったり、元々対戦ゲームではないタイトルに対戦要素を付け足したりなど納得出来ないような取り組みばかりが目立つ。
とは言え…
esportsというワードを先頭にアピールしたいというのもめっちゃ分かる、特に日本ではそのくらいじゃないとイメージ的にも難しいだろうっていう。
ただ結局は面白いゲームがなければ何も起きないし、逆に面白いゲームがあるのに運営やコミュニティの動きが悪ければ何も起きない。
現状日本のゲームはesportsの観点から見たら総合的に上手くやれていない事が多いように思える。
ニンテンドウドリーム内コラム「ゲーム解剖学」では、題材として「根底にある日本のスポーツ観」というのもありました。
簡単に言うと、海外と日本とではスポーツ観・スポーツの定義が異なっているとして、やはり日本ではスポーツ=運動と訳されてしまう。
ゲームはスポーツなのか?オリンピックの種目になり得るのか?これは、個人や業界が決める事ではなく、社会全体が決める事としている。